■ 前期型 SS-I 、SS-I 4WS、 SS-II

 1993年(平成5年)10月、セリカST20系のSS-I 、SS-I 4WS 、SS-II がフルモデルチェンジでデビュー。
 SS-I は燃費を重視したモデルで、エアコン、内装などを簡略化して低価格化が図られたグレードです。
 SS-I 4WS は、SS-I に4WS の機構を装備したモデルで、4WS 以外はSS-I と変わりません。
 SS-II はST20系の基本となるグレードです。このSS-II の装備や外装を変更し、後のSS-III 、GT-FOUR、コンバーチブルが登場します。
                   

 この前期型はセリカST20系の出発点となるモデルなので、おおまかな特徴を挙げていきます。

■ 外装・内装

 写真は前期型のSS-I 。SS-I 4WS やSS-II とボディは共通で、グレードの刻印もないので外装から見分けるのは困難です。前期型の外装の特徴は、フォグライトがバンパー内グリルに格納されていることです。


▼SS-I、SS-II前期のボディカラー
 
カラー名
カラー番号
  
シルバーメタリック
199
 
ブラック
202
 
スーパーレッドIV
3L2
 
スーパーブライトイエロー
576
 
ディープティールメタリック
752
 
グレイッシュターコイズマイカメタリック
753
 ボティカラーについては左の通り。白がないというのが特徴的で、これは後に発売されるGT-FOURのWRC限定モデルのために残しておいたのでは? と思わせます。


▲標準で装備されるエアロパーツは、この当時は一切ありませんでした。写真の2脚タイプのリアスポイラーはよく見かけますが、これも当時はメーカーオプションとなっていました


▲ステアリングの素材ではSS-I はウレタン、SS-II は本革巻きという違いがありました

▲ABSとエアバッグはオプション。エアバッグ用のステアリングは、4本スポークで、材質はノーマルと同じです。また、SS-II では写真のように本革製シートが選択できました

 前期のオーディオは、次の中から選択式でした。

  • オーディオ無し + 4スピーカー
  • カセット一体式AM/FMチューナー + 4スピーカー
  • カセット・CD一体式AM/FMチューナー(スーパーライブサウンド) + 8スピーカー

 左はスーパーライブサウンドのコンソールです。コンソール奥にパワーアンプ、助手席下にもウーハー用パワーアンプが搭載されています。このオーディオシステムは独自のシステムを構築しており、他のオーディオシステムに変更する場合に、大きな障害となりました。


■ エンジン

 左はSS-Iのエンジンルームで、3S-FEが搭載されています。SS-I、SS-I 4WS が3S-FEを搭載。SS-II が3S-GEエンジンを搭載しています。
 エンジンの出力については、下の表のようになっています。SS-I の3S-FEですが、ST18系からはエアクリ、インマニの形状等が変更されている程度で、ほとんど変更されていません。SS-II については、高出力化が図られており、MTとATで出力特性の味付けが異なっています。

 エンジンへの空気流入量の計測には、Dジェトロのバキュームセンサーが使用されています。これは空気の圧力を測定して流入量を算出しようというものです。センサー部分が吸気抵抗にならないメリットはありますが、Lジェトロ方式よりは精度が劣るというデメリットもあります。ST20系のセリカでは、後期VVT-i エンジンが登場するまで、このDジェトロが採用されています。


▼ST20系前期のエンジン出力
 
3S-FE
3S-GE(MT)
3S-GE(AT)
最大馬力
140ps/6000rpm
180ps/7000rpm
170ps/6600rpm
最大トルク
19.0kgm/4400rpm
19.5kgm/4800rpm
19.5kgm/4800rpm

▼フューエルインジェクターの吐出量アップ
ST18系
ST20系
185cc/min
200cc/min

▼ウォーターポンプの吐出量アップ
エンジン回転数
ST18系
ST20系
1000rpm
18.5L/min
30.0L/min
4000rpm
86.0L/min
140.0L/min
 また、SS-II の3S-GEについては、かなり多くの箇所が変更されています。シリンダーヘッド、カムシャフト、バルブ、タイミングベルト、ピストン…等、書き出すとキリがないほどです。それぞれの変更点を眺めると、出力向上に伴う補器類と冷却性能の向上が重視されていることがわかります。

■ ミッション

 左の写真はMTのS54型ミッションです。MTにはS54型と、ビスカスLSDを内蔵したE56型の2種類があります。変速比・減速比はそれぞれ微妙に異なります。
 ビスカスLSDはスーパーストラットサスペンションとセットとなっており、接地している側のタイヤに強引に駆動力を伝える機能を持ちます。
 ATはST18系のA241E型からA140E型に変更されています(後期でまたA241E型に戻る)。変速比・減速比は次の表の通りです。


▼MT(マニュアル)トランスミッションの減速比
 
3S-FE
3S-GE
S54
S54
E56
1速
3.285
3.285
3.538
2速
1.960
1.960
2.045
3速
1.322
1.322
1.333
4速
1.028
1.028
1.028
5速
0.820
0.820
0.820
減速比(Final)
3.944
4.176
4.235
▼AT(オートマチック)トランスミッションの減速比
3S-FE
3S-GE
A140E
1速
2.810
2.810
2速
1.549
1.549
3速
1.000
1.000
4速
0.706
0.706
減速比(Final)
3.731
3.950


■ サスペンション・ブレーキ

 フロント・リアサスペンションは左の写真のようなマクファーソンストラットです。このサスペンションは、部品点数が少ないために軽いという特徴があります。ただ、サスの動きによるタイヤ接地面の移動量が大きいという弱点があるため、SS-II ではフロントサスペンションを移動量を小さくしたスーパーストラットにオプション選択できました。ただ、スーパーストラットは機構が複雑で、社外品の選択肢が少ないというイヤな特徴がありました。

 SS-I には4WS車があり、ステアリングの舵角に応じてリアサスペンションを同位相・逆位相にモーターで最大5度まで動かします。デュアルモードといって、ノーマルモードは40km/h、スポーツモードは60km/hで同位相・逆位相が切り替わります。

 フロントブレーキには、マクファーソンストラットにはPD57型キャリパー、スーパーストラットにはPE40T型キャリパーです。
 リアブレーキはAD32R型で、3S-GEエンジン用はシリンダー内径がちょっと大きのAD35R型が採用されています。サスペンションの種類とエンジンの出力によってブレーキキャリパーの組み合わせが混在しているというのが、ちょっとややこしいですね。サイドブレーキはドラム式です。
また、この当時、ABSとエアバッグはオプション設定となっていました。

▼各サスペンション・エンジンによる搭載ブレーキキャリパー
フロント
リア
サイドブレーキ
マクファーソンストラット
スーパーストラット
3S-FE
3S-GE
全車
PE57
PE40T
AD32R
AD35R
ハブ内蔵
マウントスライド式
ツインピストン・マウントスライド式
マウントスライド式
ドラム式

■ タイヤとホイールサイズ

 デビュー当時はSS-I が14インチ、SS-II が15インチの鉄製ホイールが標準でした。それぞれ、オプションとして15インチのアルミホイールを選択できました。左はSS-I の14インチ標準ホイールです。

 セリカに使用するホイールの特徴は、PCD100、5穴、オフセット+45が標準サイズだということです。この組み合わせは一般車種の中では珍しい組み合わせなので、ホイール探しには少し手間取るかも知れません。ただ、インプレッサ用ホイールとオフセット値が異なるぐらいなので、そのセンから探すのが早いでしょう。GT-FOURオーナーは、もっと苦労しているのですよ…。


▼各グレードによるタイヤ・ホイールサイズ
グレード
タイヤ幅/扁平率
ホイールサイズ
リム幅
オフセット
材質
SS-I
195/65
14インチ
6JJ
+45
SS-II
205/55
15インチ
6.5JJ
+45
オプション
205/55
15インチ
7JJ
+45
アルミ

■ まとめ

 ざーっとデビュー当時の前期型SS-I とSS-II をご紹介しましたが、エンジンとミッション、駆動形式などの組み合わせを表のようにまとめました。前期型ST20系の特徴は、SS-I とSS-II の格差があまり付けられていないことです。本来はSS-I は燃費重視型という位置づけなのですが、マイナーチェンジを繰り返すたびに、少しずつSS-I の装備がグレードの低いものへと削られていきます。ほんのわずかな金額しか削れないものもあるのですが、逆にそれだけセリカの生産台数が少なく、コストに跳ね返っていたのだと思います。SS-I が燃費型だからといって、決してバカにしたりしないようにしてください。スポーティな乗り心地を誰にでも味わえるようにと、セリカの間口を広げる大切な役目を果たしているのですから。

グレード
エンジン
ミッション
ミッション形式
駆動形式

シリーズ

SS-I
3S-FE
5速MT
S54
FF
ST202
FF・4WS
ST203
4速AT
A140E
FF
ST202
FF・4WS
ST203
SS-II
3S-GE
5速MT
S54
FF
ST202
E56
4速AT
A140E